もう一緒に住めない、っていうけど その4


なんで、話が進まないのか。
それだけ「周辺症状に対する薬」の問題が根深いんだろうね。
なんども触れるようにします。
で、がんばって、話進めます。


で、伝家の宝刀。
前回、あれだけ注意がき、書いたんで、ネタバレしてるけれどね。
なので、大ミエきったけど、そこんとこ、さくっと。


娘の言葉、「叫ぶんです」。
だからぼくは、リスパダールを0.5mg出しました。

なぜ伝家の宝刀か。この当時、認知症の暴言暴力にリスパダールを0.5mgだけ処方する、というのは、国内では、ぼくの周囲の先生とか、その他ごくわずかな医者しか、知らない技だった。結構効いた。錐体外路症状とか抗コリン作用とか少ない、って自慢してた。あっ、まあ、こういったたぐいの薬につきものの副作用のことだよ。みんな驚いた。でもさあ、この話、「効いた」、ということを深く考えなければ、の話だけれどもね。すっとおとなしくなって、いい人になった。それから10年。いまや常識的な処方。でね、これって、いい処方ではない。なぜなら、おとなしくさせる「だけ」だから。副作用でやすい。またどうしても認知機能は悪化する。だから、やむを得ずの、処方。積極的に選択すべき方法じゃーない!まあ、当たり前の話だけどさあ、書いておかなければと。

毎日、電話する。
翌週訪問。
ややおとなしくなった。
でも、風呂場では、叫ぶ、のは変わりない。
馬鹿でしょ。ぼく。
そりゃ、全裸で、おしりに水かけられれば、だれでも騒ぐわ。
逆に、騒がなければ、それこそ、異常でしょう。
そんなこともわからないんだからね。
このときのぼく。

いま思えばだよ。だいたい、大声出す、とか、徘徊する、とか、薬が効くわけない。単に、意欲落とすだけ。それだけなら、まだいいかも。漫然と飲めば、錐体外路症状、(んーー、これはどこかでまとめて書こうかとおもますが)が出る。後戻りできない。

すごい、しょぼい、伝家の宝刀。
でも正直、その当時あんまり、あたらしい抗精神病薬がなくて、古いのも使った。
いろいろと試した。
狙い通りにならない。
本人の意欲が低下するばかり。

一方、娘は、もう極限状態。
さらに、別の日に、訪問。
母親は、手をタオルで縛られ、ベッドに座らされている。
おしりに手をやらせないためだ。
娘は、台所の机の上に、顔を腕の中に沈めて、泣いている。
本多さん、うちの看護師さん。
縛られている母親の横に座っている。
母親は、「なんで、私はこうされるの?」と泣きながら本多さんに言う。
それを聞いている本多さんも、その不憫さを見て、泣いている。

(もーー、みんな泣いてんじゃん。ったく、どーしろっ、つーの!)
ぼくの頭の中の、ぼくは出口のない広場を全速力で走り回って、叫ぶ。

騒ぎはいつかおさまるもの。
すこし、娘は落ち着きを取りもどす。
でも目に涙を浮かべながら、ぼくを見上げ静かに。
「先生、わたし、ころしてしまうかも・・・」
・・・
ぼく、固まる。


まあ、つづく。


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