ラーメンはうまい。いきなりですが。
豚骨。
濁ったスープの上に背油付きのやつ。
さらにねぎとバターをトッピング。
ご飯も頼む。
体に悪そうなものほど、ありえないうまさ。
あちこちに、いろんな店がある。
夜食べる。
血圧、コレステロール、血糖を頭から消す。
なんでこんなうまいものがあるのか。
そこで、認知症の話。
診察室には、ぼく、父親、娘。
当然、個人が特定できないように、いろいろと改変してあります。
娘「先生、このまえ大変だったんです。」
ぼく「どうしたの?」
娘「ちょっと午前中に、私留守にしてたんです。」
ぼく「へー。」
娘「昼前に帰ったんですけど、ちょうど父が外にラーメン食べに行く、
といってお金持って玄関にいたんです。」
ぼく「そーなんだ、そりゃーいいじゃん。」
娘(間髪入れず)「『いいじゃん』じゃないです!」
(ぼくの心の中「あっ、しまった、やべっ」)
娘「ぎりぎりのところでつかまえたんですよ。
もしそのまま出て行ってしまったら大変なことになっていました。」
ぼく(キリリと)「あー、それは、よかった。それで?」
娘「ラーメン、ラーメン、っていうので、私、父のために、ラーメンつくってたべてもらったんです。」
ぼく(キリリと)「あー、それは、よかった。」
父(すごい小声で)「んーー、ラーメン食べたかったんだから」
娘は献身的。
すごいと思う。
安全も守られた。
立派なものだ。
父親はたしかにラーメンも食べられた。
でも、父親が小声でいったラーメンは
どんなラーメンだったんだろうか。
ちくりと胸が痛む。
ある小規模多機能に働く若者が言った。
「ご利用者様の希望をなるべく叶えます。
クロワッサンが好きな人であれば、かならず週一回はお出しします!」
でも、その人施設に入る前、毎日クロワッサンたべてた。
いい若者なんだけどね。
認知症はいまMCI(軽度認知障害、雑に言えば予備軍)を含めて、1千万人はいる。
あなたもわたしも、近い将来認知症になる。
他人(ひと)事ではない。
この話の良し悪しも、答えはない。
でも認知症医療って、こういうことを考えることから始まる気がする。
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