認知症 を取り巻く、ぼくが、えらいなあ、と思った話。
人間ってすごい。
ぼく、10年ほど前は認知症の人々をもっぱら訪問していました。いまは外来が中心だけどね。なにせ、外来に、いけない、いかない人々。みんな、それなりの、ふかーーい理由がある。
あるおうちの話。もう、そーだなあ、12年位前かなあ?このエピソード。例のごとく、当然、個人が特定できないように、筋に関係ないところは、改変。
とある団地。
まあ、いろんな事情があって、娘と母親が同居。
母親が 認知症。
ある日、訪問。エレベータない。
階段上っているうちに、ぼく、息が切れる。
看護婦さん、なに食わぬ顔。
体重が倍ぐらい違う。
そんなもんかねぇ。
ピンポーン、とベル鳴らす。
すぐにドアが開く。
娘:「お忙しいのに、申し訳ありません。ありがとうございます。」
にこやかに迎え入れてくれた。
台所の椅子にすわって、話を聞く。
さっきまであんなに、にこやかな人だったのに、話を続けるうちに、泣き始める。
「もう、やだ。」
「母の下の世話。私、もう我慢できない。」
「本当に、においが本当に嫌なんです。」
「こんなことやらなければならないなんて、もう、信じられない。」
「逃げ出したい。」
「もう、なに言っても、わかってくれない。」
「もう、バカになってしまった。」
「もう一緒には住めない!!!・・・・」
そして、最後に。
「どうにか、してください!!」
叫びに近い。
そして、大泣きに泣く。
・・・
ぼく、固まる。
もともと母親は、いいところのお嬢様。
一家はみな医者か学者。
父親は若いころ病死。
娘二人を女手ひとりで育てる。
なにがあってもへこたれない。
気丈で、厳しい母親だった、という。
その母親がいまや、毎日、便失禁をする。
その始末を、毎日娘がしている。
それが耐え難い。
都会の団地だ。2Kという間取り。
狭かった。
ふすまは取り払ってある。
タンスが通路をふさいでる。
隣の部屋に行くときには、ぼくは、息を吐き切る。
おなかをへっこめる。隙間をぬって移動。
その空間で、娘は、毎日、母と二人で暮らしている。
以前は日中はパートで働いていたのだが、便の一件以来、ひねもすがら、家にいる。
なんだか、さっと終わるかなあ、と思ったけれど、次回。
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