認知症を取り巻く、ぼくが、えらいなあ、と思った話。
やっと、母娘ばらばらに生活するようになった。
ぼくは、週一回、その病院に通う。
もともとの母娘の住む団地は、都内にあって、その病院を神奈川県にある。
結構、遠い。
あんなに、母親のことを嫌っていた娘は、時間があれば、毎日、通うんですよ。病院に。これが。
当然、ぼくも、毎週同じ日にその娘とあう。
その病院には、中庭があるんです。
晴れた日は、なかなかいい場所。
ぼくも時間がある時には庭にいく。
ジュースの自動販売機がある。
そばにベンチがある。
そのベンチに座りながら、缶コーヒのむ。
だいたい、そういうところって、同じ人がたむろする。
ぼくのお友達のひとり。
60歳くらいかなあ、統合失調症で入院している女性がいる。
構音障害(うまいこと口が動かせない)がある。
うまくスムーズにしゃべることができない。
でも、いつも、顔をくしゃくしゃにして、満面の笑み。
この人は、ぼくの師だなあ、と。
ぼくを中庭で見つけると、すぐに、
大きな声で、いつもその人から、あいさつ。
「こぉーんにちわーあー!」
いつも、心が安定している。
でね、母親は、その人と同じ病棟で寝泊まりしている。
母親は、足腰が弱くなって、もう、一人では歩けなくなっていた。
母親が入院してから、何日も経った。
その間、ぼくはその病院に外勤にいく。
その人は自動販売機のそばの椅子にはいない。
母親を車いすにのせて、中庭を散歩。
あの満面の笑みの女性が車いすをおす。
母親は、長年の認知症のために、認知機能が下がって
言葉はでるけれど、
もう、うまく会話はできない。
庭の向こうで、なにを話し合っているのかは、聞こえない。
でも、その女性に母親もそれにつられて、無邪気に笑っている。
一旦、休憩。
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