2024年10月26日(土)午後3時から三鷹駅前コミュニティ・センターで第29回認知症当事者勉強会が開催されました。この勉強会は「認知症になった後、どのように生きるか、どう生きられるか」を認知症の方を含め、参加者全員で一緒に考える場です。
勉強会が始まったのは12年前の2012年9月です。2024年には「認知症基本法」が施行され、認知症についての新しい考え方が広がってきました。今回は、「希望」をキーワードにして、何がどのように変化してきたかについてお話いただきました。
テーマ :認知症診断後の「希望」とは?
〜認知症取材24年、そしてこれから〜
話題提供者:川村雄次さん (NHKディレクター)
前半
川村さんの認知症観の変化
取材を始める前は、認知症は知的能力が失われる病気であり、認知症と診断された人が結婚することにさえ疑問を抱いていたそうです。しかし、看護師の石橋典子さんやクリスティン・ブライデンさんとの出会いを通じて、その見方が大きく変わりました。
かつては「認知症の人は社会の厄介者」と見られ、社会の役割は認知症の人を「無害化すること」だと考えられていました。しかし、川村さんの中では認知症の人も一人の生活者として支援が必要であり、「認知症の診断と「幸せ」は両立する」と考えるようになったのです。しかしその当時の世間の常識は全く食い違っていました。川村さんは新しい認知症観を広めることが自分の使命だと考え、メディアの役割として情報の格差を埋める発信をしてきたと語られました。
アルツハイマーになったことに心を痛めるだけでなく、新しい人生を歩き始め、生きる喜びに到達することも出来る。(石橋典子さん)
「私」独自の本質は、私の中隔にあって、最後までのこるものだ。私はきっと今より、なお一層真実の「私」になっていく。(クリスティン・ブライデン)
川村さんから紹介のあった言葉
「早期診断・早期絶望」から「早期希望」へ
認知症の早期診断を受けても、まだ介護が必要ではない人には何の支援もない「空白の期間」が指摘され、本人にはメリットがなく「早期診断・早期絶望」と捉えられていた時期もありました。その後、日本認知症本人ワーキンググループや2024年施行の認知症基本法で「尊厳」や「希望」が掲げられるようになり、希望を持つことの重要性が強調されるようになりました。希望とは一体何なのでしょう?
クリスティーンや小澤勲先生、丹野智文さんの「希望」に対する考えも紹介されました。一緒に登壇された山中しのぶさんと共に「希望とは何か」について深く考えていきました。
診断後支援「ピアサポート」
診断後の支援として重要な「ピアサポート」についての紹介がありました。ピアサポートは、がんや障害の分野では広く行われており、元気な当事者と出会うことで悩んでいる当事者が元気づけられ変わっていく力になると説明されました。ピアサポートはスコットランド認知症慈善団体の診断後支援の5つの柱の中の一つになっています。世界初の認知症の当事者活動団体「スコットランド認知症ワーキンググループ」を結成し初代議長となったジェームズ・マキロップ氏の言葉「認知症になった後にも人生がある」と併せてその重要性を話されました。
さらに、丹野智文さんや山中しのぶさんが行っている認知症の人のピアサポート(仙台いずみの杜診療所・三鷹のぞみメモリークリニック)についても触れ、「ピアサポートがあるかないかで人生が大きく変わる」と伝えました。
また、山崎英樹先生の
医師にとってピアサポートがあることを知りながらそれを処方することのできないのは、結核にストレプトマイシンがあるのを知りながらそれを処方することができないのに等しい。
いずみの杜診療所:山崎 英樹 医師
という言葉を引用し、ピアサポーターが希望そのものだと話されました。
後半
グループワーク
5、6人でグループを作り下記の課題で話し合いました。
- 「希望」とは何か?
- 「共同作業(by・with)」で何を目指すのか?
- 進行をどう語るのか?語らないのか?
各グループでは活発な話し合いが続き、終了の時間を知らせても気づかない人がいるほど盛り上がっていました。川村さんの話をきっかけに、参加者全員が自分の言葉で語り、お互いの話を集中して丁寧に聞き合う姿が印象的でした。また、川村さんが静かに各グループを回りながら、そっと耳を傾けている様子も心に残りました。
認知症の古いイメージから新しい視点へと変化する中「過去に何が起こったのか」を知ることで「これから」を考えるきっかけとなりました。
川村さん、ありがとうございました。
福祉ジャーナリスト町永俊雄さんのコラム認知症フォーラム.comで詳しく紹介されています!ご一読ください!
文責 精神保健福祉士 寺尾康子
初診のご予約
直接お電話いただくか、WEB予約フォームをご利用ください。