研修インタビュー【いずみの杜診療所・地域連携室】

のぞみメモリークリニック 社会福祉士 
佐々木泰介が仙台のピアサポートにお邪魔しました

寺尾康子(のぞみメモリークリニック精神保健福祉士)がお話を聞きました

寺尾

佐々木さん、6月に仙台に行ってきたんですって? 突然でしたよね?

佐々木

はい、丹野智文さんに「仙台のピアサポートってどんな感じなんですか?」って聞いたんですけど「じゃ来てみる?」っていう話になって、院長に相談したら「へー、お願いしてみたら」と。すぐに丹野さんが仙台の清山会の地域連携室の人に繋いでくれて。決まるまであっという間でした。「じゃあ、6月のピアサポートの日にね」って。

寺尾

よかったですね。それにしても決定と行動の早いこと!

佐々木

そうなんです。仙台では良いと思ったことを取り入れるのも早くて。以前のぞみメモリークリニックに仙台の方がいらした時「のぞみの待合室の書籍コーナーが良いと思ったんで」と帰ってからすぐに書籍コーナーを取り入れたそうです。

寺尾

なんで仙台(清山会)だったんですか?

佐々木

のぞみ(メモリークリニック)にいらした丹野さんの話からなんです。何せ「さりげなさ」が良いんだよねっていうのです。

寺尾

なになに?「さりげなさ」ってなんのこと?

佐々木

そう。わからなかったからどうしても行ってみたいと思ったんです・・(笑)

寺尾

様々な先駆的な活動をされているところですよね。

佐々木

そうなんです。事前に清山会のホームページを読みました。認知症の人の自立や共生、権理などの言葉にハッとさせられる記事があります。その中でも私にとってコロナ禍での記事が印象に残りました。

https://www.izuminomori.jp/いずみの杜診療所・地域連携室

仙台いずみの杜地域連携室
いずみの杜診療所・地域連携室の皆さんと
寺尾

何をみさせていただいたのですか。

佐々木

今の私の中のメインはピアサポートですね。のぞみメモリークリニックでも認知症の方々をメインに境目のない寄り合いを作りそのタネをみなで育みたいのです。

寺尾

丹野さんや、山中しのぶさん(高知県希望大使)にご指導いただきながら、のぞみメモリークリニックで実施しているピアサポートとは違うのですか?

丹野智文さん紹介

宮城県仙台市在住の丹野さんは、39歳の若さでアルツハイマー型認知症と診断されました。その当時、自動車販売会社で営業マンをしていましたが、商談したばかりの顧客の顔や名前を思い出せないことがありました。当時はネットや本などで探しても、前向きに生きていくための良い情報もなく、小さな子どもたちや妻を思うと毎日泣く日々があったそうです。
ピアサポートでは、「診断されてから11年以上経っているけど今も元気です」と言って笑顔で始まります。丹野さんの活動は「目の前の認知症の人を笑顔にしたい」という思いから生まれています。

ピアサポートってなんだろう?

ピアは「等しい立場の人」を意味します。ピアサポートは、自らの経験に基づきお互いに支え合う活動です。認知症や精神的な問題・病気・障害など同様の経験を持つ人が支援者として活動し経験や知識、感情を共有します。ピアカウンセリングとは異なり双方が仲間として対話します。専門家の支援とも異なり経験者同士が理解し合い励まし合うことで前向きな気持ちや生きる力が生まれます。
【参考文献】
1)令和3年度厚生労働省障害者総合福祉推進事業 障害者ピアサポート研修における講師の養成のための研修カリキュラムの効果測定及びガイドブックの開発基礎研修テキスト(改訂版vol.1) 2022年3月
社会福祉法人豊芯会 https://www.mhlw.go.jp/content/000998693.pdf
2)令和元年度障害者総合福祉推進事業 障害福祉サービスの種別ごとのピアサポートを担う人材の活用のた めの調査研究
ピアサポートの活用を促進するための 事業者向けガイドライン
社会福祉法人 豊芯会 https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000654213.pdf
3)知ることから始める精神障がいピアサポート川崎市版発行日 令和 2 年(2020 年)3月 編 集 川崎市ピアサポート活動連絡会 発 行 川崎市健康福祉局障害保健福祉部精神保健課 〒 210-8577 川崎市川崎区宮本町1番地 TEL:044-200-3608
https://www.city.kawasaki.jp/350/cmsfiles/contents/0000118/118786/sirukotokarahajimerupe

佐々木

そうですね・・でも、仙台のピアサポートとは違うと丹野さんから聞いたので。部屋の隅で聞かせてもらいました。(認知症の方々の会なのでスタッフも入らないのです。でもこの日は特別に仲間に入れてもらいました)
認知症当事者が数人集まって思うまま話をしたり聞いてるだけの人もいたり目を瞑っている人がいたり。自由なんです。スタッフや家族もいない。そのうち認知症の薬の話なんかも出てきて。「あっ、私も同じ薬飲んでる」と盛り上がるのです。

そこで気づいたのです。

「困り事を聞いて解決しましょう」なんていう相談とかカウンセリングではないのです。丹野さんが時々「ピアカウンセリン」ではないんだよ。「ピアサポート」なんだよ。というんですね。今更ながら、その言葉の意味が見えた感じがしたのです。確かにのぞみでのピアサポートでも丹野さんや山中さんのお陰で「相談事の解決」ではありません。でもどうしても一対一での対話では、このような雰囲気にまでは達していないな。なるほど、なるほど、と部屋の隅でうなずくばかりでした。

会の名前は【仕合わせの会】と聞きました。
「幸せ」ではないんです。「仕合わせ」なのです。
由来は、中島みゆきの歌「糸」の歌詞からきているそうです。歌詞の中の


”縦の糸はあなた 横の糸は私” 
”逢うべき糸に 出逢えることを” 
”人は 仕合わせと呼びます”

中島みゆきの歌「糸」より

というフレーズの「仕合わせ」って言葉を会の名前に入れてはどうでしょうか、と一人の当事者の女性から提案があったそうです。一緒に考えていた当事者の皆さんや他の全員がこれに賛同し出会いの大切さ幸せをかけた「仕合わせの会」になったとうかがいました。

寺尾

佐々木さんは社会福祉士で支援者の立場ですよね。

佐々木

そうなんです。この手の話になったとき、私はついやってしまうのです。「何に困っているのですか」という問いがどうしても頭をもたげてくるのです。

でも「仕合わせの会」は違いました。

困っていることに焦点がない。まさにお互いのしあわせに誰もが向かっている感じ。「さりげなさ」というのは、困り事がある前提でその話を聞いて解決しよう、という埋め込まれた性(さが)があるとしたら、そんな目的意識に対して、警鐘を鳴らしていたのだ!と思えたのです。会だけでなく、例えば連携室の川井丈弘さん【いずみの杜診療所地域連携室 室長 精神保健福祉士】の雰囲気もなんかさりげないんです。そのお陰でかえって芯が通ってる感じというか・・・。

寺尾

のぞみメモリークリニックでの認知症の人びとの会はどのような感じになりそうですか?

佐々木

今回の見学というか勉強させてもらったことをどう生かすのかは、まだ整理がついていません。でもはじめたものを継続して育むために、まずは「また来たいなぁ」と思える場を作ることからではないかと思います。

寺尾

最後に何かありましたら。どうぞ。

佐々木

はい。急なお願いにもかかわらず快く見学を受けていただいた
山崎先生、川井さん、いずみの杜診療所地域連携室の皆様、丹野さん、清山会の皆様に感謝申し上げます。私なりの大きな気づきがありました。お忙しい中、山崎先生をはじめ、皆様のご厚情とご配慮により貴重な機会をいただきましたことに心より感謝申し上げます。
本当にありがとうございました。

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