#07 母性

#07 母性


我が息子へシャケ(生)を届けに行った母。
しかし息子は留守だった。
母はシャケをポストに入れそのまま帰った。
帰宅した息子の嫁がポスト開けるとそこにはシャケが。
驚く嫁の横で息子はすぐに母の仕業だと分かった。
母に確認したところで覚えていないだろうからとあえて追求はせず。
「母は兄にどうしてもシャケを食べて欲しかったようです。
これも母のやさしさですね」と、
娘さんは笑って話してくれた。

認知症との診断があってから元気を失い、
徐々に身の回りのこともできなくなって行った母。
ある日いっしょに暮らす娘が交通事故で大怪我をした。
家のことやお母さんの世話のほどんどを娘がやっていた。
これでは生活が成り立たない。
「母はその日から家事や身の回りのことを率先してやるようなりました。
私のことも心配してくれます。
まるで昔の母に戻ったようです」と、
娘さんは嬉しそうに話してくれた。

クリニックには多くの“母“が訪れる。
やさしい母、おだやかな母、怒りっぽい母、気難しい母、さまざまな母。
母たちは皆たくましい。
熊がポストにシャケを入れる

冨田しのぶ

Shinobu Tomita

のぞみメモリークリニック医療事務スタッフ/映像クリエーター

映像クリエーターとして企画、撮影、編集を手掛ける。動画広告、e-Learningコンテンツ、映画予告編など。
介護ヘルパーを経て、現在はのぞみメモリークリニックにて医療事務スタッフとして従事。
また、2021年に三鷹市地域福祉ファシリテーター養成講座を受講。その後、地域福祉についての情報を発信する情報メディア「とみぞうさんと地域福祉未来研究所」立ち上げ。メールマガジンやYouTube、Instagramで地域福祉の未来につながるような情報を発信。
メールマガジンに掲載したインタビューをまとめた冊子。
電子版「イマカエ〜今を考え変える人たち
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