#10 となりのねずみ小僧

#10 となりのねずみ小僧


トトロは子供にしか見えない。
しかしさつきとメイの両親は妄想だとは言わない。
泥棒は本人にしか見えない。
しかし物を盗られたと言えば妄想と言われる。

87歳の母が物を盗られたと言うようになった。
娘2人と一緒にやってきたお母さんは一人で暮らしている。
家に知らな人が入って来て通帳や宝石を盗られた。
鍵を付け替えたけれどもまた入られた。
警察に通報して大事になった。
と、母の行動に困ってやってきた。
検査の結果は認知機能の低下はあるようだが、
今のところ年齢相応で病気によるものではないとの診断。
それを聞いた娘がぼそっと、
「母の言っている泥棒は本当かもしれませんね」
「物騒な世の中ですから」
結果、防犯カメラをつけると言う結論で幕を閉じた。

認知症の診断がつけば「物盗られ妄想」と言われ、
認知症の診断がつかなければ「犯罪」となる。
真相は薮の中。
多襄丸を信じるか真砂を信じるか亡霊を信じるかは、
私たち次第。

令和の盗賊ねずみ小僧は
特別な人にしか見えないのかもしれない。
さつきとメイの両親のように信じてみると、
素敵な物語が広がるかもしれない。

冨田しのぶ

Shinobu Tomita

のぞみメモリークリニック医療事務スタッフ/映像クリエーター

映像クリエーターとして企画、撮影、編集を手掛ける。動画広告、e-Learningコンテンツ、映画予告編など。
介護ヘルパーを経て、現在はのぞみメモリークリニックにて医療事務スタッフとして従事。
また、2021年に三鷹市地域福祉ファシリテーター養成講座を受講。その後、地域福祉についての情報を発信する情報メディア「とみぞうさんと地域福祉未来研究所」立ち上げ。メールマガジンやYouTube、Instagramで地域福祉の未来につながるような情報を発信。
メールマガジンに掲載したインタビューをまとめた冊子。
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