
#12 先輩後輩
「あなたは、認知症歴何年?」
「半年です。おたくは?」
「わたし、8年」
「え?8年も前に?」
「あなた、まだまだね」
クリニック受診者さん中心の集まりでのひとコマ。
この集まりでの上下関係は認知症歴で決まる。
歴の長い人ほど先輩風を吹かせても良しとされる。
年齢は関係ない。
80歳の新人もいれば、65歳の先輩もいる。
歴が長ければ長いほど信頼され、尊敬される。
「認知症って言われてから落ち込んでいます。どうしたら良いですか?」
新人は先輩方に問う。
「ちょっと忘れたくらいでも、まあいいかって思えばいいのよ。
認知症になってから、出会ったことのない人に出会えたり、集まりに参加したり、
良いこともあるのよ」
「先輩は強いですね」
「ボクはね、いい人になれました。以前はひどい人間だったんですよ。
人の痛みがわかるようになって、人に優しくなれたって言うのかなあ。ボかぁねーー」
先輩は少し自分に酔って経験談をはなす。
尊敬の眼差しで見つめられる先輩は、悦に入る。
厳しい上下関係もなく、先輩のしごきもなく
わきあいあいと、やっています。


冨田しのぶ
Shinobu Tomita
のぞみメモリークリニック医療事務スタッフ/映像クリエーター
映像クリエーターとして企画、撮影、編集を手掛ける。動画広告、e-Learningコンテンツ、映画予告編など。
介護ヘルパーを経て、現在はのぞみメモリークリニックにて医療事務スタッフとして従事。
また、2021年に三鷹市地域福祉ファシリテーター養成講座を受講。その後、地域福祉についての情報を発信する情報メディア「とみぞうさんと地域福祉未来研究所」立ち上げ。メールマガジンやYouTube、Instagramで地域福祉の未来につながるような情報を発信。
メールマガジンに掲載したインタビューをまとめた冊子。
電子版「イマカエ〜今を考え変える人たち」
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