#09 ワーカー

#09 ワーカー


クリニックの近所に店を構えるうどん屋店主のお父さん。
たいていはお店が休みの土曜日に娘さんに付き添われやってくる。
古くから地元で親しまれているうどん屋さんで、
創業当初から毎日うどんを打ち続けていると言う。
「うどんが打てなくなってきたから店を閉めようと思っている」と、
1年くらい前からおっしゃっているが、
今でも週に6日はうどんを打っているとお話を聞き、
まだまだうどん屋の歴史は続くのだとホッとする。

他にも、
銭湯の番頭に立つお母さんやクリーニング屋の看板娘、
お蕎麦屋さんで掃除のパートをしている方、小学校の交通整備をしている方、
野菜を育て売っている方もいる。
以前できていたことができなくなってきたと悩んだり、
自分の記憶に自信が持てなくて不安だとおっしゃる中、
現役で働く受診者さんたちに尊敬の念を覚える。
同時に人間にとって働くとは?と考えさせられる。

労働と仕事は同じようだけど、
哲学者のハンナ・アーレント的には別もののようだ。
労働は生活や消費のための活動で、
仕事は別の価値を生み出すものをつくる活動、とある。
受診者さんたち聞く話の雰囲気からは、
彼らの活動は仕事にあたいすると感じる。
お客さんに喜んでもらうために、家族に喜んでもらうために、
雇い主に喜んでもらうために、小学生の市民の喜びのために、
毎日働いている。
そう考えると、たとえ賃金が発生しないとしても、
誰かのためにする行いすべてが仕事と言えるのかもしれない。

私が彼らと同じような悩みを抱えるようになった頃に、
果たして彼らと同じように仕事ができているだろうか。


またどんな仕事をしていたいか。
朝6時。うどん店の前をぐうぜん通りかかった。
お父さんが黙々と掃き掃除をしていた。
「もう歳だから」なんてあと50年は言えないと、
お父さんの姿を見て思った。

冨田しのぶ

Shinobu Tomita

のぞみメモリークリニック医療事務スタッフ/映像クリエーター

映像クリエーターとして企画、撮影、編集を手掛ける。動画広告、e-Learningコンテンツ、映画予告編など。
介護ヘルパーを経て、現在はのぞみメモリークリニックにて医療事務スタッフとして従事。
また、2021年に三鷹市地域福祉ファシリテーター養成講座を受講。その後、地域福祉についての情報を発信する情報メディア「とみぞうさんと地域福祉未来研究所」立ち上げ。メールマガジンやYouTube、Instagramで地域福祉の未来につながるような情報を発信。
メールマガジンに掲載したインタビューをまとめた冊子。
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